してはいけないこと


裏蓋を開けて機械を見たり、緩急針を触って調節をしたりすることは、大きなリスクでしかありません。

絶対に裏蓋を開けて機械を見ないでください

時計は小さな小さな機械が集まり、絶妙なバランスで組み上げられている精密機械です。
最近の雑誌やホームページでは、「時計の裏蓋を開けて機械を見る」という情報を掲載されているものも良く見かけますが、裏蓋を開けて機械を見るようなことは絶対に避けてください。

ホコリやゴミなどが入り込んでしまうことで誤動作の原因になることはもちろん、機械の心臓部ともいえる部分にちょっと引っかかってしまうだけで、修理すらできなくなってしまうことになってしまうかもしれません。
機械なので部品さえ手に入れば修理できるだろうと思われるかもしれませんが、100年前の時計でも数十年前の時計でも、同じ部品が手に入るという保証はまったくありません。

大手の時計メーカーですら、長いところでも30年ほど経てば部品の供給はされなくなります。
100年前の時計・50年前の時計となると、メーカーや機械によっては、同じ機械を探すことすらできないものもあります。

本当に冗談のような話になりますが、手に入らない部品となると、小さな石ひとつ・小さな部品一つのことで数十万円という費用がかかることもあります。
またどんなにお金を出しても、直せない・修理すら受け付けてもらえないこともあるのです。
そうなると「見てみたい」という好奇心で見てしまうことで、数十万・数百万円とする時計が、あっという間に動かない金属の塊に変わってしまいます。

 

また例えまったく同じ部品が手に入ったとしても、長い年月による摩耗などで、その部品は同じ部品であってもその時計には合わないかもしれません。
時計に入っている石一つを取ってみても、形が違うものもあれば、厚みや大きさもメーカーや年代によってまったく違います。

クラッシックカーを修理するような、手で持って修理できるような大きな部品を削ったり加工したりという作業ではありません。
小さな小さな部品であるがために、「汎用品」や「代用品」が簡単に利用できるようなものはありませんし、加工するといっても容易ではありません。

 

機械をみることを勧めているのは、修理をする側からしてみると明らかに無責任です。
見たいという気持ちはわかりますが、そこには大きすぎるリスクしかありません。
絶対に裏蓋を開けて機械を見る・触ることはしないでください。

緩急針は触らないでください

少し時計のことがわかりだしてくると、少しの誤差ならなんとか自分で直せないかと思うのは自然なことです。
ホームページなどを調べるとすぐに、「緩急針」を触れば誤差が縮められるという情報を得ることができるでしょう。

でもこの緩急針は、あくまでしっかりと組み立てられた上で、技術者が仕上げの段階で本当にわずかな誤差を調節するためのものです。
緩急針は車のサイドブレーキのように、可動域が決まっているようなものではありません。
動かし方次第で壊してしまうこともあります。

機械は見るだけでもリスクを伴います。
誤差が出ているときは必ず技術者のもとに調整に出してください。

誤差が出ている・誤差が出始めているのは、機械に調整やオーバーホールが必要だという目安です。
緩急針を触って調節しても、根本的な原因は解決されずリスクしかありません。

分解・組み立ては絶対にしないでください

図解で詳しく分解方法や組み立て方法を紹介されている雑誌・ホームページもありますが、絶対に真似をしないでください。
見ることですら大きなリスクを伴います。

一度分解してしまうと、経験や技術が無い方だとまず元に戻すことはできません。
髪の毛のような部品が曲がったり折れたりすると、もう2度と同じ精度を出すことはできませんし、動かなくなってしまうかもしれません。

主ぜんまいの力を伝えるために、各部品は噛み合った状態で部品同士に力がかかっているかもしれません。
そんな負荷のかかっている部品を触ってしまえば、部品が折れてしまったり、飛び出してしまうこともあります。

分解をしてみて元通りに組み直してみても、まったく動かなくなってしまうことがほとんどです。
見た目には問題無く組み上げられたとしても、必ずどこかに問題があるものです。

 

修理をする側からすれば、このような無茶な分解をされた時計を修理をすることは、あまりやりたくないことです。
その理由は、おおむねにしてどこかの部品に問題が出ているため直せない可能性が高く、直せたとしても部品の交換など大きな手間や時間がかかることが予測されるためです。

修理をさせていただくにしても、時計を開けて部品を調べてという作業が伴います。
その結果、壊れているため直すことができませんというのでは、こちらの手間や時間が無駄になってしまいます。
多くの修理店でご自身で分解・組み立てをした時計の修理を受け付けないのは、このような理由があります。

当店でも同様で、ご自身で分解・組み立てをされたことによる故障の修理は、基本的には受け付けません。
絶対にご自身で分解されることのないようお願いいたします。


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